夢がさめるなら

 

 

 

はじめてムラの初日から通っている公演が、無事に4分の3を完走した。

 

この状況下で、仕事の日も観劇の日も毎日祈るような気持ちでスマホを握りしめ、中止の連絡がないことに胸を撫で下ろす日々。退勤してからタイムラインでみなさんのレポを拝見し、今日も幕が上がって下がったんだ、と安堵していた。

 

東京公演が始まる前に、トップコンビの退団日発表があった。まだまだ宝塚初心者だが、初心者マークはほんの少し色褪せ始めてきた私はムラの初日から少し覚悟が出来ていた。そして、あぁもしかしたら、という気持ちでお芝居とショーを観ていた。

 

東京最初の観劇時、案の定今まで泣かなかった所で涙がぼろぼろこぼれた。お芝居でも、ショーでも、隣の人にごめんなさいと思いながらハンドタオルで目元を拭い続けた。

 

 

 

東京公演も折り返したところ、ある日のフィナーレで突然の寂寥感が胸に迫った。

 

芹香さんの歌う『ミ・アモーレ』、ノスタルジックな音楽と情感溢れる歌声に、あぁこの夢はさめてしまうんだと泣きそうになった。

 

ミ・アモーレは、その、ずるくないか。

桜木さんファン研究科1年の私でさえこんなに涙が溢れてくるのに、いわんや、というやつだ。

 

この美しい夢がさめてしまうことが怖い。予定通りに幕が上がって、そして下がってほしいのに、明日が来ないでほしい。大千穐楽の配信を最後に、この夢はさめてしまうんだ。『あなたを振り向かせ、時計の針止めて、永遠に旅を続けたい』、ローマの歌詞がこんなに胸に刺さるようになるなんて、初日は思っていなかった。

 

 

 

私の夢はいつかさめる。

もうとっくに「子供」じゃなくなってから桜木さんに出会った私はそんなことはじめからわかっているし、心はともかく頭は理解している。

 

幕が下りて灯りがつけば、芝居は終わる。

どんな夜も明けるように、いつかは終わる。

どんな素敵な夢だって、はやくさめたい夢だって。

 

それが仕方のないことなら、いつかこの夢がさめるなら、せめて思いっきり酔いしれたい。悪酔いでも構わない。あなたが全身全霊で魅せてくださる夢に、届けてくださる愛に、最後まで全力で応えたい。

でも許されるなら、私は私のままで……「私」を捨てずに、桜木みなとさんという暖かく鮮烈な光を道標に、私の人生を逞しく爆走したい。無理な応援をして長続きしないよりも、身の丈に合った応援をして、せめて心だけは最後までお側にいたい。

すべてを捧げられないダメなファンでごめんなさい、貢献やお力添えなんて言葉には到底届かない、ささやかな応援しかできない弱いファンでごめんなさい。そのぶん私の私が私で在れる範囲をよけておいた、その残りのぜんぶを差し上げますから、どうか受け取ってください。

 

そしてその時が来たら、きっとたくさん泣いてしまうけれど。胸を張って会いに行ける私でしゃんと背筋を伸ばしてお見送りできるように、あなたのファンという肩書きに恥じない私でいたい。あなたと一緒に走った日々を支えに、それからの毎日を駆け抜けられるように。

 

 

 

今からこんなことを考えてしまうくらい、私の中でこの公演が特別で、真風さんと潤さんとの出会いがあたたかく素晴らしいもので、退団者の方々と、退団者のファンの皆様との出会いが本当に嬉しくて。

みなさんのファンの方にも、私がいま反芻していたような気持ちを抱いていた方がいらっしゃるかもしれない。

 

 

留依さん

希峰さん

琥南さん
惟吹さん
花城さん

 

そしてタカラジェンヌ人生のゴールを決めた真風さんと潤さん

 

今日からの毎日が、みなさんと、みなさんのファンの方々にとって、どうかあたたかく優しい日々ありますように。

 

きっと今までで一番配信見ながら号泣するんだろうなと思わずにはいられない。

 

大好きな皆さまと、皆様の大切なファンの方々が、幸せでありますように。